【賃上げ促進税制の基本】2024年改正のポイントをわかりやすく!
賃上げ促進税制について、適用条件を満たしているにも関わらず、上手に利用できていない事業者は少なくありません。制度利用の可否や、必要な要件など、賃上げ促進税制のポイントを押さえて活用していきましょう。
- 【1】賃上げ促進税制2024年の改正ポイント
- 【2】賃上げ促進税制とは?
- 【3】大企業向け賃上げ促進税制の概要
- 【4】中堅企業向け賃上げ促進税制の概要
- 【5】中小企業向け賃上げ促進税制の概要
- 【6】賃上げ促進税制を利用する企業側のメリット
- 【7】賃上げ促進税制を活用し、人材確保・自社の成長に役立てよう
【1】賃上げ促進税制2024年の改正ポイント
【2】賃上げ促進税制とは?
【3】大企業向け賃上げ促進税制の概要
1. 適用対象
2. 適用期間
3. 適用要件
3.1 通常要件
3.2 上乗せ要件①
3.3 上乗せ要件②
4. 税額控除率
【4】中堅企業向け賃上げ促進税制の概要
1. 適用対象
2. 適用期間
3. 適用要件
3.1 通常要件
3.2 上乗せ要件①
3.3 上乗せ要件②
4. 税額控除率
【5】中小企業向け賃上げ促進税制の概要
1. 適用対象
2. 適用期間
3. 適用要件
3.1 通常要件
3.2 上乗せ要件①
3.3 上乗せ要件②
4. 税額控除率
【6】賃上げ促進税制を利用する企業側のメリット
1. 設備投資の予算を増やすことができる
2. コストを抑えて人材育成ができる
3. 優秀な人材を確保できるようになる
【7】賃上げ促進税制を活用し、人材確保・自社の成長に役立てよう
【1】賃上げ促進税制2024年の改正ポイント
令和6年4月1日から令和9年3月31日までに開始する事業年度では、大企業や中堅企業は従業員の給与等を引き上げ、その他要件を満たした場合に最大で35%の税額控除を受けることが可能です。令和4年度の税制改正では最大で30%の税額控除であったことを踏まえると、控除率は前年度比+5%となっています。
同事業年度において、中小企業は従業員の賃上げをおこない、その他要件を満たした場合には、最大で45%の税額控除を受けられます。令和4年4月1日から令和6年3月31日までに開始する事業年度では最大で40%の税額控除であったことを考えると、控除率はこちらも前年度比+5%となっています。
また、中小企業向けに繰越控除制度も設けられました。従来の賃上げ促進税制では、利益の出ていないの中小企業は減税の効果が得られにくいという問題点がありましたが、この繰越控除制度により賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額を5年間にわたって繰り越すことが可能となりました。
繰り越し期限内に黒字に転換することができれば減税による恩恵を受けられるため、多くの中小企業が賃上げに取り組みやすくなります。
【2】賃上げ促進税制とは?
賃上げ促進税制とは、従業員の賃上げ・雇用拡大・人材育成を進める事業者に対し、負担増加額の一部を法人税や所得税から控除する制度です。
令和4年度税制改正によって、旧制度の「人材確保等促進税制」が「大企業向け賃上げ促進税制」に、同じく旧制度の「所得拡大促進税制」が「中小企業向け賃上げ促進税制」へと再整備されました。さらに令和5年度の税制改正によって、「大企業向け賃上げ促進税制」「中堅企業向け賃上げ促進税制」「中小企業向け賃上げ促進税制」へと細分化され、最大税額控除率だけで言うと、若干企業が有利になるような制度へと変わりました。
続く物価高による実質的な賃金の低下や、少子高齢化にともなう人手不足など、政府として抱える課題への対策として、重要な役割を担う制度のひとつとなっています。
【3】大企業向け賃上げ促進税制の概要
1. 適用対象
青色申告書を提出するすべての企業
2. 適用期間
令和6年4月1日から令和9年3月31日までに開始する事業年度
3. 適用要件
大企業向け賃上げ促進税制には、通常要件と2種類の上乗せ要件があり、いずれが適用されるかよって税額控除額が変わります。適用要件と税額控除額の詳細を詳しく説明していきますのでご確認ください。
3.1 通常要件
継続雇用者給与等支給額(※)が、前事業年度より3%以上増えていること
※ 継続雇用者給与等支給額とは
前事業年度及び適用事業年度の全月分の給与等の支給を受けた国内雇用者
3.2 上乗せ要件①
教育訓練費(※)の額が、前事業年度より10%以上増えていること 且つ 教育訓練費の総額が継続雇用者給与等支給額の0.05%以上であること
※ 教育訓練費とは
国内の雇用者に対して職務に必要な技術や知識を習得・向上させるための費用
教育訓練費として認められるものの例:
・法人等が教育訓練等を自らおこなう場合の外部講師の報酬、交通費、宿泊費 など
・他の者に委託して教育訓練等をおこなってもらう場合の委託費、施設使用料 など
・他の者がおこなう教育訓練等に参加する場合の授業料、受験手数料 など
教育訓練費として認められないものの例:
・法人等がその使用人または役員に支払う教育訓練中の人件費、報奨金 など
・教育訓練等に関連する従業員の交通費、食費 など
・法人等が所有する施設等の使用に関する水道光熱費、維持管理費 など
3.3 上乗せ要件②
子育てとの両立・女性活躍支援をしているとして、「プラチナくるみん」または「プラチナえるぼし」に認定されていること
4. 税額控除率
【4】中堅企業向け賃上げ促進税制の概要
中堅企業向け賃上げ促進税制は、2024年の改正で新たに追加された区分です。改正前は大企業に含まれていましたが、地域の雇用を支える中堅企業にも賃上げをしやすい環境を整備するために創設されました。
1. 適用対象
青色申告書を提出する従業員数2,000人以下の企業または個人事業主
2. 適用期間
令和6年4月1日から令和9年3月31日までに開始する事業年度
3. 適用要件
中堅企業向け賃上げ促進税制には、通常要件と2種類の上乗せ要件があり、いずれが適用されるかよって税額控除額が変わります。適用要件と税額控除額の詳細を詳しく説明していきますのでご確認ください。
3.1 通常要件
継続雇用者給与等支給額(※)が、前事業年度より3%以上増えていること
※ 継続雇用者給与等支給額とは
前事業年度及び適用事業年度の全月分の給与等の支給を受けた国内雇用者
3.2 上乗せ要件①
教育訓練費(※)の額が、前事業年度より10%以上増えていること 且つ 教育訓練費の総額が継続雇用者給与等支給額の0.05%以上であること
※ 教育訓練費とは
国内の雇用者に対して職務に必要な技術や知識を習得・向上させるための費用
教育訓練費として認められるものの例:
・法人等が教育訓練等を自らおこなう場合の外部講師の報酬、交通費、宿泊費 など
・他の者に委託して教育訓練等をおこなってもらう場合の委託費、施設使用料 など
・他の者がおこなう教育訓練等に参加する場合の授業料、受験手数料 など
教育訓練費として認められないものの例:
・法人等がその使用人または役員に支払う教育訓練中の人件費、報奨金 など
・教育訓練等に関連する従業員の交通費、食費 など
・法人等が所有する施設等の使用に関する水道光熱費、維持管理費 など
3.3 上乗せ要件②
子育てとの両立・女性活躍支援をしているとして、「プラチナくるみん」または「えるぼし(三段階目以上)」に認定されていること
4. 税額控除率
【5】中小企業向け賃上げ促進税制の概要
1. 適用対象
青色申告書を提出する中小企業者または従業員数1,000人以下の個人事業主
2. 適用期間
令和6年4月1日から令和9年3月31日までに開始する事業年度
3. 適用要件
中小企業向け賃上げ促進税制には、通常要件と2種類の上乗せ要件があり、いずれが適用されるかよって税額控除額が変わります。適用要件と税額控除額の詳細を詳しく説明していきますのでご確認ください。
3.1 通常要件
全雇用者給与総額(※)が、前事業年度より1.5%以上増えていること
※ 大企業や中堅企業の場合は前事業年度及び適用事業年度の全月分の給与等の支給を受けた国内雇用者の給与総額から適用の可否を見分けますが、中小企業の場合は全雇用者給与総額から適用可否を考えます。
簡単に言うと従業員個々人の固定給等を意識的に上げなくても、残業時間の増加や従業員の増員などで、結果的に事業者の給与等支出が前事業年度より1.5%以上増えていれば良いということになります。
3.2 上乗せ要件①
教育訓練費(※)の額が、前事業年度より10%以上増えていること 且つ 教育訓練費の総額が継続雇用者給与等支給額の0.05%以上であること
※ 教育訓練費とは
国内の雇用者に対して職務に必要な技術や知識を習得・向上させるための費用
教育訓練費として認められるものの例:
・法人等が教育訓練等を自らおこなう場合の外部講師の報酬、交通費、宿泊費 など
・他の者に委託して教育訓練等をおこなってもらう場合の委託費、施設使用料 など
・他の者がおこなう教育訓練等に参加する場合の授業料、受験手数料 など
教育訓練費として認められないものの例:
・法人等がその使用人または役員に支払う教育訓練中の人件費、報奨金 など
・教育訓練等に関連する従業員の交通費、食費 など
・法人等が所有する施設等の使用に関する水道光熱費、維持管理費 など
3.3 上乗せ要件②
子育てとの両立・女性活躍支援をしているとして、「くるみん」または「えるぼし(二段階目以上)」に認定されていること
4. 税額控除率
【6】賃上げ促進税制を利用する企業側のメリット
企業が賃上げ促進税制を利用することで得られるメリットには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。簡単に3つのメリットをご紹介します。
1. 設備投資の予算を増やすことができる
設備投資の予算を増やすことができるという点は、賃上げ促進税制の大きなメリットのひとつと言えます。賃上げ後の給与支給額の予算に、その年の控除率をかけることで節税額を計算することができます。その金額から賃上げによる予算増加額を引いた金額を、設備投資に充てることが可能です。設備投資額が増加することで有形固定資産と無形固定資産のどちらも向上するため、事業者としても長期的な成長を見込めるのではないでしょうか。
2. コストを抑えて人材育成ができる
賃上げ促進税制を適用することで、より一層コストを抑えて人材育成に注力することができます。前述の通り、教育訓練費を増加させることによって、賃上げ促進税制の控除率の上乗せが可能です。教育訓練費とは、雇用者の職務に必要な技術や知識を習得するために支出する費用の事を指します。教育訓練等を法人自らが行う場合や他の企業に委託する場合でも、かかった費用は教育訓練費として扱うことができます。そのため、賃上げ促進税制を適用することで、ほとんどの場合は本来よりも低いコストで教育をおこなうことができます。
3. 優秀な人材を確保できるようになる
賃上げ促進税制を利用すると、優秀な人材が退職する可能性を減らすことができると言っても良いでしょう。優秀な人材は給与や待遇に不満を感じたり、やりがいを失ったりすることで退職してしまう傾向にあります。この制度の上乗せ条件を利用するにあたって、教育訓練費を増やした結果、社員は新しい経験を積んだり、専門知識を学べたりします。そのうえ給与も増加するとなると、優秀な人材の確保が期待できるのではないでしょうか。
【7】賃上げ促進税制を活用し、人材確保・自社の成長に役立てよう
物価の上昇や人材不足などの背景により、事業者による賃上げへの機運が高まってきています。このような状況下で、賃上げを実施したいと考えている事業者が活用できる措置の一つが「賃上げ促進税制」です。この制度を活用することで、より多くの企業が賃上げに取り組みやすくなることが期待されます。
賃上げの実施に加えて、従業員への教育訓練や女性の活躍推進に取り組むことで、さらなる税制優遇の措置を受けられるのが、本制度の特徴となっています。長期的な視点で自社の成長を目指していくために、賃上げ促進税制の活用をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
参考
中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック|中小企業庁
賃上げ促進税制について│財務省